こんにちは! 英語翻訳者のケイタです。
フリーランスで12年、訳書が7冊ほどあります。
He=彼、She=彼女?
中学校で英語を習いはじめたころ、こう教わりました。
みなさんもそうですよね?
いえ、これで合ってます。問題はありません。
ただ、「なんかヘンだな」とも思いませんか?
そうなんです!
もちろん「彼」も「彼女」も使いますが、あまり多用すると、それこそ英文和訳っぽいカタコトの表現になったりしますよね。
なんかくすぐったーい!
He/She って何?
では、He/She をどう捉えたらいいんでしょうか?
一言でいえば、
くり返しを避ける記号
です。
って感じですが、それだけです 笑。
文の中で、前に出てきた「男性」を受けるのが He、「女性」を受けるのが Sheです。
はい、必ずしも「彼/彼女」と訳さなくてOK!
なんて訳すかは文脈によります。
訳し方はさまざま
たとえば、友だちと先生の噂話をしているとしましょう。
先生の名前は「田中」です。一度目は「田中先生ってさ~~」っていっても、二度目以降は「先生」だけになったりしますよね。「先生さ~~」と。
この場合、二度目の「先生」にあたるのが、英語では He です。
くり返しを避けるために、前に出てきた「男性」名詞を受けているんです。
何度も言いますが、これだけです。
英語の「He/She」に、日本語で言うときの「彼/彼女」というニュアンスがあるわけではありません。(「彼」「彼女」って日本語には、どうしても独特の語感がありますよね。)
では、もう一つ具体例として、だれもが知っているマンガ『ドラえもん』を使わせていただきます!
『どらえもん英語版 1巻』
なんとドラえもん初登場の回、『未来の国からはるばると』から。
未来から突如現れた謎のロボット(ドラえもん)からタケコプターを貸してもらったのび太でしたが、タケコプターの着けどころが悪くて……というお話。
最後のコマの、のび太の一言(赤枠部分)にご注目。
Is he really a reliable guy?
あいつ、ほんとにたよりになるのかな。
he が出てきましたね。「あいつ」が he です。
もしここが「彼」だったらどうでしょう?
→「彼はほんとにたよりになるのかな」
じゃあ今回の he に対応する自然な日本語はというと、
――そう、「あいつ」なんですね。
もちろん、ほかの呼び方でもいいんですよ。そのまま「ドラえもん」でもいいし、「ドラえもんのやつ」でもいいし、「あれ」でもいい。それぞれ微妙にニュアンスがちがいますね。
親しみを感じつつも信頼に足るのかどうか疑っている…ここはやっぱり、「あいつ」がしっくりくると思います。
「He/She」のニュアンスは文脈によって変わるんです。
訳も、ころころ変化します。
訳さないことも多い
ただし、He/She は、日本語に訳さないことも多いんです。
先ほどの、のび太のセリフも、「あいつ」をとって「ほんとにたよりになるのかな」だけでも、十分通じます。
まず、英語では主語や目的語を省かない、という原則を覚えてください。
英語は、わかりきった情報でも省略しにくいんです。「○○のことだ」ってわかりきっていても、省かず主語や目的語を立てます。日本人からすると「省いてもいいじゃん、わかるじゃん」って思いますが、英語の感覚はちがうようです。
そうはいっても、英語でも毎回毎回、主語や目的語を固有名詞で繰り返していたらくどいですよね。固有名詞とは、そのものに固有の名前。「ドラえもん」や「のび太」といった人の名前は固有名詞です。
いちいち「ドラえもん」「ドラえもん」「ドラえもん」「ドラえもん」……ってくり返していたら、うんざりしますよね。
そこで、He や She、あるいは It や That などの代名詞を使うんです。代名詞とは、名詞の代役。前に出てきたものの、代わりに使う言葉です。
一度出てきた人やもの、文脈からわかることは代名詞で済ませるんですね。
ただ、日本語は、わかりきったことは省略しますよね。いちいち「あいつは」とか「それは」とか訳していたらくどいので、日本語では言わなくてもわかると思ったら、省いちゃって大丈夫です。
まとめ
今日はちょっと長かったので、最後にまとめ!
He や She は、くり返しを避ける記号
訳は文脈しだい 訳さなくていい場合も多い
最後に…もし現役の中学生や高校生がこれを読んでくれていたら、ちょっとご注意を。
HeやSheの訳は文脈しだい、と言ったばかりですが、テストの時だけは「彼・彼女」と訳した方がよいかもしれません。
ぼくが中高生の頃、学校では「He/She」=「彼/彼女」というのが正解でした。いまもそうかはわかりませんが、その単語を理解しているかどうか試されている場合、へたに訳を工夫すると減点されてしまうかも…
自然な日本語に訳すという縛りがあるならまだしも、普通のテストでは「彼・彼女」と訳出しておくのが無難かもしれません(^^;)
そういう独創性を評価してくれる素敵な先生もたくさんいますけどね!
僕は中学生のときほんっっっとに英語がわからなくて、底なしの蟻地獄にはまったような気持ちでしたが、高校生のとき良い先生に巡り会えて、英語が好きになれました。
それでは!
He/She=彼/彼女ではないことを初めて知ったのは、次の本でした。『翻訳の原点』(辻谷 真一郎著、NOVA BOOKS)。20代の後半でこの本と出会い、英語の読み方・訳し方ががらっと変わりました。He/Sheにかぎらず、目から鱗の話がまんさいです。