英語のギモン

英語がつまらないのは、イメージが湧かないからですよ【used toはセピア色】

英語の授業で習った表現で、なんか退屈だなーって思ったもの、ありませんか?

そりゃいっぱいあるよー。

テストのため、受験のためって思うと、どうしても暗記物になっちゃいますよね。
教科書や参考書に英単語と訳語が並んでいて、それをセットで暗記するみたいに。

 

 

 

 

でもね、ぼくは大人になって翻訳の仕事をはじめてから、
あれっ、あの表現ってこんなニュアンスなんだ。へ~おもしろ~い」って思ったことがたくさんあるんです。

きょうはその一つ、「used toを紹介します。

 

わけがわかると面白くなる!

さて、「used to」の意味、わかりますか?

useでしょ? 「使う」! 

って思いますよね。でもこれは違うんです。
一種のイディオム(慣用表現)で、「以前は~だった」って意味なんです。
参考書なんかには「過去の習慣を表す」って載っていると思います。

あ、そういや見たよ、単語集で。
でもなんでそうなったのかなぁ?

まずその時点で、「?」ですよね。
二十数年前、高校生のぼくもそうでした。
でも試験に出るので、わけもわからず、訳語を丸暗記しました。

「わけもわからずに」覚えるってのは、たいてい楽しくないんです。
「わけがわかった」ときに、初めて楽しくなる

そこで、used toの「わけ」をこれからお話しします!

 

「使う」から「慣れる」

「use」は「使う」なのに、なぜ「used to」は「以前は~だった」なのか?

ざっくり言えば、

というイメージです。(*厳密な説明ではありませんが、ふつうに英語を使う上ではこれで十分です)

これで、「使う」と「以前は~だった」がつながりましたね。
少しイメージできましたか?

ふむふむ。 

ではここからが面白いところです。

「以前は~だった」という日本語自体は、とくに面白くないんですが、
英語のニュアンスを感じ取れるようになると、なかなか切なくてグッとくる言葉なんです。

 

used to はセピア色

以前、『ビッグファットキャット』という英語学習書のシリーズがベストセラーになりました。その1冊、『ビッグ・ファット・キャットとマスタード・パイ』(向山貴彦/著、たかしまてつを/イラスト)に、used toの説明があります。

心の中でも「過去」になった出来事――もう決して戻れない時間……それが「セピア」――「used to 辞書形」の文で表す過去です。

つまり、英文の中でused toをみると、セピア色の写真が目に浮かんでくるというんですね。

セピア色は、郷愁やノスタルジーを感じさせます。

今はなくなってしまったもの、消えてしまったものへの想い、懐かしさ、愛着。
そういう言葉にならない切なさを漂わせる言葉なんです、used toって。

グッときた「used to」の例

先日、たまたま読んでいた絵本で、その切なさに気づいて思わずグッときました。

はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー』といいます。知っていますか?
赤いキャタピラの「けいてぃー」が、雪に覆われた町を救うため、大奮闘する話です。


あらすじはこちら(→出版社のページ

話の中で一度だけ、used to が出てきます。

They used to say, “Nothing can stop her.”

「けいてぃーに やれないことは なんにもないんだ」と、
かんりぶの ひとたちは いつも いっていました

日本語で読んだら、べつになんてことのない文ですよね。

ただ「used to」は、裏返せば「いまはちがう」ということです。

はっ! なんか、急に…切なくなっちゃった… 

石井桃子さんの名訳ですので、難しいことを考えなくても作品を十分味わえます。
味わえますけど、「used to」のノスタルジーがつかめていれば、より物語に深みが出て、作品の世界観をさらに楽しむことができると思うんです。

「used to」でセピア色に染まった情景から、ぼくの想像は膨らみ……
↓ ↓ ↓

この絵本がアメリカで出たのが1943年。
作者バージニア・リー・バートンさんが若い頃住んでいた小さな町をモデルにしたそうです。大戦真っ只中の当時のアメリカで、この絵本のような、機械と人が助けあうおとぎ話のような世界がどのていど残っていたのか?


出版から80年近くたった今読むと、余計に、消えてゆく古き良き世界への郷愁のようなものを感じるんです。

バージニア・リー・バートンさんといえば『ちいさいおうち』(1942年)が有名です。

『ちいさいおうち』では機械文明を批判的に描いていましたが、『けいてぃー』ではキャタピラをヒーローに据えている。とすると、単純に機械を否定していたんじゃなく、そこに暮らす人たちの絆やつながりを無視して破壊するような、文明の進み方を批判していたのかもしれません。


『けいてぃー』で描いた、機械と人が助けあい、信頼しあう温かい小さな町「じぇおぽりす」こそ、バージニア・リー・バートンのひとつの理想だったのかも…。

…なんて、まったくの想像ですが、それで全然構わないんです。
「used to」というちょっとした手がかりをもとに想像を遊ばせる。
ぼくはそんな英語との付き合い方が好きです。

ネットや参考書で正解らしきものを覚えるばかりじゃ、退屈しちゃいますよね。
今後も、英語の「わけがわかる」ように、ぼくなりに書いていきたいと思いますので、
またのぞきに来てください。

それでは!

ちゃおー。