Want は基本単語ですよね。どんな意味か言えますか?
そうですね。じゃあ、これはどうでしょう。
want of money
って思いますよね。
ほんとは「お金が足りない」って意味なんです。
実はぼくも高校生の頃、同じ疑問を持ちました。あの頃の自分に、今ならこんな風に説明します!!
wantはもともと、「欠けている」という意味でした。「欲しいものがない」状態です。
手元の英和辞典(『ジーニアス英和大辞典』)によると、wantの語源は、古ノルド語のvanta。「欠けている」という意味で、ここからのちに「欲しい」という意味が生まれました。欠けているから欲しい、というわけです。
この「欲しい」という新しい意味が、現在では主流です。とくに動詞形でよく使います。I want to ~などの表現はおなじみですよね。
では、「欠けている」という元の意味は消えちゃったのかというと……実は、今でも残っているんです。とくに名詞形のときは、むしろ、元の意味で使います。
最初に挙げた want of money は、まさにその例です。お金がwant→欠けている→足りない。
名詞と動詞で意味が違うなんて、まぎらわしいですよね。名詞は元の意味のままなのに、動詞は新しい意味で使うんですから。
ふだん英語を読んだり書いたりするうえでは、ひとまず次のように覚えてください。
- wantの意味は「欠けている」→「(だから)欲しい」と移り変わってきた。
- 動詞形では「欲しい」の意味で使うことが多い。現在はこの使用法が主流。
- 名詞形では「欠けている」の意味になることが多い。あまり頻繁には使わないが、フォーマルな文章ではいまも使われる。
だいたいこんな風に覚えておけば、大丈夫かなと思います。
wantって言葉は、ただ「~が欲しい」だけじゃなく、「必要なものがないから欲しい」ってこと。よく歌の歌詞で、I want you~ってフレーズがありますが、「私にはあなたが必要なのに、あなたがいなくちゃだめなのに……」ってニュアンスなんですね。
そこがのみ込めると、類義語のlackなどとの違いもわかってきます。ただ「ない」わけじゃなく、「必要なのにない」のがwantなんです!
ところが……例外も
ここからは応用の話です。動詞形は「欲しい」、名詞形は「欠けている」というのが基本でした。基本をおさえれば、8割方大丈夫ですが、残り2割も知っておいたほうが安心ですね。
そこで、英和辞典でwantを引いてみます。日常の口語英語について調べるとき、ぼくがまず引くのが『ロングマン英和辞典』。学習用英英辞典で有名なLONGMANをもとにした英和辞典で、自然な英文がたっぷり。翻訳家の柴田元幸さんも編集に参加していて、日本語の訳文も自然なんですよ。
『ロングマン英和』で動詞のwantを引くと、8つの意味があげられています。

最初の6つは、まあ「欲しい」という意味ですね。
7つめの「……を必要とする」はちょっと微妙で、「欠けている」の意味が入ってきています。
そしてラスト8番目、「足りなくて不自由している」は、はっきり「欠けている」という意味です。
このように動詞でも、「欠けている」という元の意味で使うことがあるんです。ぼくたち外国人学習者にとってみれば、困った話です。ただ、ひとつ救いなのは、≪フォーマル≫な文章でしか使わないということ。

語義の横に、≪英≫≪フォーマル≫とありますよね。これは「イギリス英語」で「フォーマルな文脈」で使うというしるし。逆にいえば、アメリカ英語でカジュアルな文脈ではあまり使わないということです。日常の英語ではあまり使わないので、ちょっと安心ですね。
一方、名詞のwantも、「~が欲しい」という新しい意味で使うことがあります。たとえば、「wants and needs」という成句で、「欲しいものと必要なもの」。
もちろん、そんな必要はありません! 英文を読んでいてwantの意味がつかめないときは、落ち着いて、語源を思いだしましょう。
大事なのは、訳語ではなく、イメージでとらえることです。「欠けているから欲しい」というイメージで、落ち着いて英文を読めば、文脈からwantのニュアンスがつかめるはず。
慣れるまではちょっと難しいと思います。でも、イメージでとらえるようにすると、今までわからなかった英文の細かなニュアンスが感じられるようになりますよ。
「欠けている」→「(だから)欲しい」というイメージ、ぜひ覚えてください!